2020年5月13日水曜日

コロナ禍の入社・訓練状況

気持ちが沈みがちですが、過度に楽観視するのも違うかと感じます。
あるエアラインスクールが必死になって生徒を獲得しようとしているのには
疑問を持つという話になったので、お伝えできる現状を少し書きます。

世界のエアラインの50%(統廃合)がなくなる可能性があるため、
FSC・LCCのいずれも規模縮小は避けて通れない道です。

残念ながら外資系エアラインでは一次解雇が始まっています。
現段階では希望退職者を募ったり、
入社直後のトレーニーから帰国手配が進められていたり・・・
各社どの層が対象になるか戦々恐々のようですが、
これは会社の考え方によるところですから不安に駆られて当然です。

シニョリティー(ベースド プロモーション)の高い順または低い順、
成績や貢献度など様々なため、予測がつきません。
噂が噂を呼んで、何が本当なのかわからないといった声が聞こえます。
しかしCOVIT-19 については”withコロナ”が標語になりつつあるように
長期戦だということは明確です。

スイスが9.11テロ事件のあと再就職しやすいからといった理由で
働き盛りや若手社員から解雇となったときには誰もが驚きを隠れませんでした。
一般的に給料の高い人を残す選択肢は少ないということです。
(もちろん経験が必須なことからバランスは図られます)

国の事情にもよります。ユナイテッドは本国各地のベース(拠点)を守り、
世界のベースを閉鎖するという判断がなされたため、
外地の誰もが失職となり退職手続きが容易ではなかったということもありました。
リストラを避けレイオフになったとしても呼び戻される可能性が低いと判断した人は
転職をして業界を去ったり、数年間、様子を見て戻ったりと道が分かれました。

リーマンショック以上の経済打撃であり、「1年で回復という期待は持てない」
と経営者の多くは覚悟をしています。
それはカタールCEOのメッセージからも読み取れます。
(各社社員にレターを送信していて個性も見えます)


日本はというと、ANAの一時帰休にあるように
雇用を維持しながらなんとか経営し続ける方向性

JAL3月入社の初期訓練は43日に発熱者を確認した段階で中断の決定がなされ、
4月入社も入社式のみ出勤し、以降は在宅勤務に切り替え継続とのことです。
同様に緊急事態宣言を受けANAANA WINGSエアージャパン
ABBでの訓練中断や5月入社以降は1ヶ月半ほど入社日が再設定され、
JTAジェットスターは入社日未定と聞いています。
Peachは地元の大阪泉佐野市から政府が配布する10万円の特別定額給付金の
確認業務を受託し、518日から客室乗務員の訓練生を中心に
確認業務にあたらせるようです。
本意ではないかもしれませんが、雇用してもらえるだけでありがたいでしょう。
また帰属意識は持てるのでモチベーション維持には一定の効果も見込めるため、
会社側の工夫のひとつとも言えます。
(医療機関のサポートは賛否両論がありますしね)


ANA系のGS早期入社組は、ラインアウトした直後に在宅勤務に切り替わり、
現場経験が少ないまま再開を待っています。
このように手元にマニュアルや資料があった場合はイメージトレーニングが
どうにか可能かとは思いますが、訓練が開始していない段階では
モックアップや実機で体感していないので知識だけでは理解が深まらず、
自分との闘いの日々でしょう。
教官との面談があるようですが、初めての一人暮らしであったり
何事も不慣れなので元スクール生にはフォローできるような態勢でいます。
SkypeZoomでは顔が見えるコミュニケーションなので少しでも
不安の払しょくになればと。
もちろん砂漠で孤独に過ごす現役も・・・

イベントリスクが高い業界であることは確かです。
このような状況下、飛べなくなるとお給料は雀の涙です。
しかし先輩方がつないできてくれたものを継承する
後輩にあたる皆さんには諦めることなく、
大空に羽ばたいてもらいたいと心から願い、応援したいと思っています。

日本底力に、
ANAの「鍛えられた翼は強い」に期待して、

STAY HOME


Skywards

2020年5月8日金曜日

【ANA】'21採用活動の一時中断について

本日午前のレッスン中にこの情報が飛び込みました。

ANAグループ2021年度入社に向けた 採用活動の一時中断について


ANAの財務状況を見れば一目瞭然であり、3月の就職活動解禁前から
かなり経営状態が危ぶまれていました。
発表時に「採用数未定」だったにもかかわらず、その後に「460名程度」と
数字を挙げる様子や入社式を取りやめた後の
防護服の縫製作業等にニュース、メディアの報じ方(情報操作)に
どこを向いて発信しているのだろうと就職支援をする立場として
違和感を禁じえませんでした。
(採用のことなど後回しになるぐらい、余裕がないことは火を見るより明らかでした)

内部事情に精通する方などの話しぶりや現役から現状報告を踏まえ、
他の講師との情報交換などからもある程度の予測してはいました。
折に触れてスクール生にはそのあたりを伝えていたこともあって
動揺することなく受け止めていた様子でしたが・・・


過去、Skywardsが経験した業界の出来事です。
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2001年同時多発テロ事件
2003SARS
2008年リーマンショック
2011年東日本大震災
2012MERS
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イベントリスクが高い業界がこれらからどのように立ち直ったのかを
研究することでわかることもありますが、
上記のようなものとは全く違う就職氷河期が始まるのだと理解しましょう。
一度目の緊急事態宣言の解除について論じられるこの段階で
「アフターコロナ」というのは楽観的過ぎて現実的ではありません。


ある日を境に戻るなんてことはあるはずもなく、
元の世界に戻ることはないかもしれません
グレーの空の下、誰もが息をひそめて
長い長いグラデーションの期間を経ることになるのです



政府の専門家会議では実践すべき「新しい生活様式」などが提示され、
どの企業も生き残りをかけなんとか需要を取り込むことに必死ですし、
航空業界含むホスピタリティー産業やレジャー産業は
規模縮小をして数年は凌ぐことになるでしょう。
TDLJR西も一時帰休の実施)

JALグループも独立系も、採用されるのはほんの一握りの人になるはずです。

ANAは専門学生600名の内定取り消しはしない方向とのことですが、
スカイマークなどの専門学生やPeachの内定者がどうなるか気になるところです。
なぜなら内定は始期付解約権保留付労働契約が成立したに過ぎないからです。



始期付=働き始める時期が決まっていること
解約権=契約を無かったことにできる権利
留保付=効力を残して持ち続けること



東証一部上場の大企業も各社、減益・一年後の業績が見通せない状況です。
全産業が壊滅的な今、社会の要請がある分野に視野を広げないと
就職活動に行き詰ってしまうかもしれません。

引き続き航空業界を目指すにしても、2年後3年後を見据えて
今を生きることが得策ではないかということを
スクール生にも話したところです。

ここを訪れた方々も少し落ち着いて考えてみてください。  




社会の贅肉が削ぎ落とされ、しかもそれは不可逆的です。
つまり後戻りできない形で変化するはずですから。


Skywards