2018年11月20日火曜日

飲酒問題から考える

日産の顔である『カルロス・ゴーン容疑者、逮捕』のニュースが飛び込むまで
世間を騒がせていた副操縦士の飲酒問題。

JAL副操縦士、英国で拘束 乗務前アルコール検査で基準大幅超過
JAL、逮捕の副操縦士がマウスウォッシュ使用 酒臭さ消すためか

英国「Railways and Transport Safety Act 2003」に法令違反をしたわけですが、
会社の記者会見にあったように、マウスウォッシュを使って意図的に
偽装工作をしたのだから数ヶ月から一年のJailedになる可能性が高いとのことです。
(現地での裁判は29日)

エアラインによって異なりますが8時間または12時間前から飲酒は禁止です。

ただし飲酒に関する規定や罰則は日本以外の先進諸国は厳しいところが多く、
国際線乗務であれば知っておかなければならないにもかかわらず、このありさま。
「ライセンスさえあれば他国のエアラインでも活躍できる」
「日本の航空会社は緩いから大丈夫だろう」という考えが、
この副操縦士にあったのなら自業自得なのかもしれません。
(アルコール依存症でであれば専門的な治療が必要)



それだけでなく気になったのが乗務編成と勤務時間の上限について。


該当便は2名でLHR/NRTを運航したそうですが、あり得ない。。
12時間以上の飛行時間があるLong haulはMulti Crew体制ですし、
機長たちがDuty timeを知らないなんて考えられないからです。

ましてや同乗予定者が飲酒容疑で連行された現場(Cockpit)にいたわけですし、
相互確認を怠った自分たちという責任問題があるストレス下。
通常の精神状況でないにもかかわらず乗務させるなんて、安全上、大問題でしょう。
運行管理者が本社に指示を仰いでいるはずですし、
JCAB(航空局)も知らないはずはないでしょうから、
なんらかの力が働いていると推察されます。

外資系にもよりますが、お世話になったエアラインのキャプテンたちは
本国だけでなくFAAやEASAの規定を把握しているので、
当然のように拒否権を行使しました。
FLTが満席であってもDLYやCXLになることがあり、当時は戸惑いましたが、
PICとして賢明な判断だったと思います。



これから業界に進まれる方々には、法令順守はすべきものであって
誰かに言われてやるのもではないことを肝に銘じていただきたいです。

※complianceとは「要求・命令などに従う」という意味で、complyという動詞から派生した言葉。
complyそのものは「守る、応える」などという意味の動詞で、「満たす、充足する」と訳される
ラテン語のcomplereが語源。

自分の身はご自身で守れるように。。
想像以上にグレーな空の世界です。


プロフェッショナルとして会社と対等に話せるBossのもとで
FLTしてもらいたいと心から願っています。



Skywards



2018年11月15日木曜日

録音されている会話

先日、航空業界に興味のある高校生の質問を受けていて
「飛行機は自動操縦なんですよね、何をしているんですか?」と聞かれたので、
あること思い出して苦笑いをしてしまいました😅



確かに、安定飛行に入ったら余裕がありそうです。
(操縦桿を握っている時間は実質4分ぐらいとかいっていたような?)


Cockpit内では、機長(PIC)や副操縦士(FO)が一切、無駄口はたたかず
堅苦しい雰囲気で操縦に集中している場合と、
おすすめの観光スポットとかレストラン、家族にまつわる話しや
たわいのない世間話、ふざけて冗談を言い合ったりしている場合とがあります。

管制とのやり取りもありますし、計器や外部の監視をする義務がありますので
新聞・雑誌を読むことはない(外資系はあるかも・・・)と思いますし、
見掛けたことはありません。
画像はお借りしています

もし新聞がバーッと広がっていても、
それは窓の日よけにしているから。
写真のように車と同じで駐機中の温度上昇を防ぐため
フロントガラスのところに付けるんですよ~






またその昔、3名体制のB747-300 機では航空機関士(FE)が
クロスワードパズルを開いているのを見たことがあります。
休憩の全てを仮眠時間とせずにDVD鑑賞をする人もいて、
個人の体調やスケジュールに合わせて時差調整をしていたりするようです。

テロの不安が深刻でなかった時代は飛行中の見学もできて、
Cockpit Crewが歓迎してくれるので、お子さまの夢を広げるだけでなく、
大人の心も躍らせていました👏
時には外国人機長がCabinでお客さまをナンパしている場面に遭遇したことも。。
(ある意味サービス精神旺盛)

これも❝外資系ならでは❞なのですが、
深夜便では刺激的な話をしてお互いの眠気を覚まそうと工夫💥

これ、全世界共通。

いわゆる下ネタなのですか、盛り上がり過ぎて焦ったことがあります。
セクハラ的なことではないものの、内容がディープだっただけに、
思わず「ここで墜落とかは勘弁してね」とお願いした経験が(笑)

なぜなら航空機にはブラックボックス(フライトデータレコーダー・
コックピットボイスレコーダー)の搭載が義務付けられているからです。
航空機事故や事件の捜査のため、のコックピット内の様子が録音されるもので、
機内アナウンスやCabin Crewとのやりとりやエンジン音もすべて記録に残ります。

Oh, No worries!

何も起こらなければボイスレコーダーが解析されることはないし、
記録媒体は前の録音を消しながら新しい内容を残していくから平気だと。
「わかってるけど、事故が起きる直前30分の様子が残るんだから
私が退室してから30分以内はやめてくれの意味だよ・・・」
と心の中でつぶやきました😓

現在では記録媒体がICメモリに変更され、
録音時間は120分間に延長になっているとのこと。
いつの日にか#Mee toの証拠となったりして(笑)
このご時世、自由に軽口を言い合ったりするものほどほどにしないとね~😏



・ 


もちろん不必要な言動を固く禁止しているエアラインもあれば、
緊張と緩和をうまく利用してより良いパーマンスを目指すエアラインもあります。


いずれにせよ確実に安全を保つため、
ゲートをBlock Outしてから10,000ft(3,000m)に達するまでと、
降下中10,000ftから駐機場へBlock Inするまでの
仕事量が多い期間を『Sterile Cockpit』といい、
Cabinからも安全に関係のない連絡はできませんのご安心ください💁



この言葉が生まれるに当たって悲惨な事故が背景にあることは
Cockpit Crew/Cabin Crewともに訓練で学んでいます